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税理士事務所にお勤めの人は給料が良いという幻想

はじめに

本記事は3sticksFPサービスの時代に投稿していた記事を、表現を少し柔らかくして再アップしたものです。
記事では税理士事務所を題材にしておりますが、士業全般に言える内容です。
難関国家資格を社会人になってから目指そうと思い立った方はぜひご一読いただき、資格取得にあたって資金計画の重要性をご一考いただけると幸いです。


税理士事務所勤務のサラリーマンは高収入?

世間では税理士事務所勤務と聞くと、
「お堅い仕事で、結構なお給料をもらっているんだろうな」
とイメージする人が結構多いようですが実際はそうではなく、むしろその反対です。

基本的に一般職員の給料水準は、業種よりも企業規模で決まると考えていただいて結構です。

地方の税理士事務所であれば、たとえ法人格であったとしても職員は数名で、所長さんのワンマン経営といったところがほとんどです。
そしてそういった組織の給料はたいていが低空飛行です。

少し想像してみましょう。
創業から数十年経っているのに職員数ひと桁という事務所は、なぜ組織が大きくならなかったのでしょうか?
通常の事業会社であれば利益を再投資し、人材を育て、時間とともに業容拡大しそうなものですが、利益が出ていても事務所規模はずっと小さいまま。
なぜでしょうか?
例えば、毎年の利益をあらかじめ設立しておいたペーパーカンパニー(資産管理会社ともいう)に流して、そこから役員にしている一族へ利益を配分していれば事業への再投資は小さくなります。
事務所内のパソコンをはじめとする設備はいつまでたっても古いまま、職員の給料も低いまま。
なんとなく、想像はつきますよね。
いま職場探しをしている方は創業年数と職員数との相関も参考にしてみてください。

実際はどのくらいもらっているのか?

上述しましたが、一般職員の給料水準は企業規模で決まる傾向があります。
ですから職員数ひと桁の税理士法人に勤める30歳よりも、中堅物流会社に勤めている22歳新卒の方が年収は高いのです。

そんなわけないと感じましたか?
現に私は30歳頃の月手取りは12万9千円でしたね。1時間超のみなし残業代込みです。
地方の職員数ひと桁の税理士法人で、昇給も毎年一応ありましたが、上昇カーブはほぼ平らです。

このとき奨学金の返済があると、詰む

そこから私の場合は奨学金の返済が1万9千円ありましたから、残業代が出ない月は11万円で生活しなくてはいけませんでした。
これで1人暮らしをしていた時期があったのですから、どのような生活を送ることになるか、想像つきますよね。

いい給料もらっていると勘違いされると辛い経験をする

こういう生活状況の中、当時はお酒を飲んでいたこともあって、息抜きも兼ねて人生相談を受けてくれるbarなんかによく飲みに出ていたのですが、そこで初めて会う常連さんには自己紹介をするし、必然的に職業も伝えることになるわけです。

そして相手からは「お堅い職業ですね。お給料、いいんでしょう?」といったお言葉を何度いただいたことか数知れません。

そのようなイメージで接してくる人の極めつけは
「いいお給料もらってるんだから、ちょっとくらい、いいでしょ?」
と言ってお金を多く負担させようとしたり、立て替えたお金をなかなか返してくれなかったりといった場面に出くわすこともあり、これは本当に堪(こた)えました。

こちらは毎月ギリギリで生活しているのに、お金を余分に払わされたり、立て替えているお金の支払いが遅くなったりすると、それが原因で一気に生活が崩れそうになってしまうのです。

勘違いされるくらいなら最初から収入を言ってしまえ

このようなやり取りが続くうち、私は自分から収入を伝えるようになりました。
職業を伝えたらほぼ必ずと言っていいほど給料の話題になるので、隠すことなくこう答えます。

「給料ですか?ひと月の手取り12万9千円です。1時間のみなし残業代込みですけど、それ以上の残業がある時はその分プラス。賞与は1ヶ月分ありますよ。うちの業界では賞与と残業代があるだけマシだそうです。」
という感じで。

相手の反応はいろいろで、ポカーンとする人、「ええっ!」と驚きつつ口元がニヤッと緩む人、「あなた、こんな所で飲んでる場合じゃないでしょう?」と説教してくれる人などなど、同じことを伝えているのに、人の反応はこんなに違うんだなぁと本当に勉強になりました。

国家試験に受かったら給料はよくなるんでしょ?

「試験合格した職員なら別でしょ」と思われた方、私の知る範囲では税理士試験に合格していてもあまり変わらないですね。
資格手当がつく程度です。

『有資格者にいい給料をあげてたら、独立資金を貯めこんですぐ独立しちゃうでしょう?』

だから経営上、お給料はたくさんあげたらダメなのです。
せっかく入ってくれた優秀な職員なのです。辞められたら次の職員を入れて育つまでの間、経営が大変になるじゃないですか?
だから小規模零細企業の経営の基本は『生かさず殺さず』なのです。

どうしても税理士登録して独立したいって?
それならそこの経営者が高額な『登録費用』を出資してくれるそうですよ。その代わりあと5年くらいそこで働き続けることを条件にね。いきなり独立してもお客さんもいない状態でリスクが高いんだから、「悪くない条件でしょ?」と。

念のために言っておきますが、これは私のやり方ではありません。私はこのような経営の仕方には反対です。
業界の発展にブレーキがかかります。羽ばたこうとしている若い人材が押し込められている状態なのですから。

そしてこれは士業全般に言える特徴ですので、これを理解した上で士業に足を踏み入れた方が良いと思います。

ブラック企業から士業への転職はキケン

ここまでのお話を読んでみていかがお感じになりましたか?

巷でいわゆるブラック企業から転職しようとしている人がこう言います。
「やっぱり資格がないとダメだ。独占業務がある強い資格を取ろう」と。
思いつきで地獄への片道切符を買おうとしているわけですね。

勉強しようとする姿勢は素晴らしいことです。人は生涯を通して勉強すべきです。
ただ、動機が安直過ぎるのです。

難関国家資格は取得のための費用が1年当たり数十万円単位かかる上に数千時間におよぶ膨大な勉強時間が必要になってきます。

ブラック企業で心身とお財布をすり減らしてきた人に、果たして耐えられるでしょうか?

くれぐれも退職後に計画や助言も無しに「仕事には就かずに1年間勉強に専念する」といったことはやめましょうね。

たとえ30歳手前で難関国家資格を取ったところで、一人前になるまでの間は立派な低所得者です。
資格取得費用と機会損失を取り戻すまでに10年はかかるでしょう。

それでも受かったならまだ良いです。専門職の土俵に乗ってしまえばあとは努力次第で次のステージへ進む道が拓けますから。

では資格取得に失敗したら?
その時35歳を超えていたら?
はっきり申し上げて生活はどん底まで堕ちる可能性が高いでしょう。頼みの綱は親や配偶者の経済力となります。

このように難関国家資格の勉強へ挑もうとしても、お金の問題が常につきまといます。

ですから受験にあたってはお金事情も含めたプランニングが重要になってくるのです。
この点をうまく書籍にまとめられている方がいらっしゃいまして、司法試験のカリスマ的講師であり塾経営者の伊藤真氏の書籍『夢をかなえる時間術』はとても参考になります。

最後に

今回は国家資格の受験の話まで展開いたしました。
受験について回るお金の問題について「受かってしまえば何とかなる!」と突撃し、そして無惨に散っていく方が私自身も含めて珍しくありません。

繰り返しますが、難関資格の勉強をしようという向上心は素晴らしいものです。

ただ、そのために必要となるお金のことを聖域化して深く考えずに猛進してしまうと、金銭的にも精神的にも大きなダメージを受けてしまいます。
そしてそこから立ち直るまでに多大な時間と労力を費やし、近親者にも負担を強いてしまうのです。

そうならないためにも、「なぜこの資格の勉強をするのか」という動機の部分から、お金や時間、支援してくれる人といった状況を整理してプランニングをする必要があるのです。

ご自身でプランニングができることに越したことはないのですが、現実には「作ったつもり」、「やっているつもり」となってしまい、なかなかうまくいかないケースが多いです。

プランニングの実行がなぜかうまくいっていない方は、一度、第三者の意見を聞いてみることも大切でしょう。

私がお力になれるとしたらこの部分でして、こういう分野でこそFP相談の存在意義を発揮できると考えております。有料となりますが、可能な限りご相談者様と一緒に最善の道を模索します。

ご相談内容は事前に申し込みフォームにご記入いただきますから、状況把握の時間を節約して、助言により時間を割くことができるようにしております。
ご興味を持っていただけましたら、どんなことでも結構ですので、お問い合わせいただけたら幸いです。
FP相談お問合せフォーム

それでは、この記事を読んでくださった皆様と面談でお会いできることを楽しみにしてお待ちしております。
最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。

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